Gaggan Anand | Bangkok, Thailand2020/02/27
バンコクを美食の街として世界的に有名にした立役者、ガガン・アナンドによる新しいレストラン。
以前率いていた「Gaggan」は2020年に閉店する予定で、その後ガガンは福岡に移り、新しいレストランを準備することになっていた。それが、他の出資者との関係が悪化し、8月末で急遽「Gaggan」を閉店。そして、たった2ヶ月強という驚異的なスピードで「Gaggan」時代のスタッフと共に新しい店のオープンにこぎつけた。ちなみに、福岡への移転計画は白紙となり、バンコクに根を張るとのこと。
2F建ての建物の入り口には、オープンエアのバー。1Fは、「G’s Spot」と名付けられたコの字型のキッチンカウンターのみの空間。2Fに上がると、キッチンの周りをテーブルが取り囲む、「Arena G」というスペースが広がる。1Fがテイスティングメニューで2Fはアラカルトもしくはカジュアルなメニューかと思いきや、どちらも食事の内容は全く一緒。
1Fは一斉スタートで、少人数向け。2Fは予約時間に幅があり、大人数でも可能。人数やシチュエーションによって、どちらのフロアを選ぶか選択できるシステムとなっている。
料理は、25皿のテイスティングメニューのみ。今回はタイに招待してくれたミシュラン主催のディナーに出席した後の2軒目での訪問だったので、特別に10皿だけ試させてもらった。
ガガンならではの、ロックを感じる料理が刺激的。スパイス使いという意味だけでなく、色彩感覚やプレゼンテーションの観点からも刺激に満ちている。
ここ2年ほどのガガンの料理は、日本の食材や日本を感じさせる皿が比較的目についたが、インドの色合いがより強まったように感じる。鮟肝やイクラなど日本の食材は用いられているが、料理としては日本というよりもイノベーティブの範疇に入る。この点は、原点回帰と言えるかもしれない。
また、「Gaggan」は「El Bulli」の流れを汲むレストランとして有名になった経緯もあって、分子ガストロノミーの要素を入れないわけにいかなかったようだが、今回のコースでは最初の皿にアルギン酸ナトリウムと塩化カルシウムの化学反応が使われていた程度で、控え目だった。この点も含め、ガガン独自の方向性がより強調されるメニュー構成となったように感じる。
ガガンは、とにかく楽しむことの大事さを教えてくれる。そして、お客さんを楽しませる気持ちは、ガガンの後をついてきた料理人たちやサービス陣にも受け継がれている。今回の店は、1Fのカウンターはもちろん、2Fでもスタッフとの距離が近いこともあって、ライブ感が高まっているように思う。
話題のニューオープンということもあって予約は困難を極めているようだが、訪れる価値のある一軒。
Yogurt, pomegranate, raw mango
ヨーグルト、柘榴、生のマンゴー
チャットマサラの再構築。
”Holi” – festival of colors
Cauliflower puree, curry leaf, dates, raisin, dehydrated vegetable powder (beetroot, cabbage, corn, carrot, spinach, butterfly pea)
「ホーリー」
カリフラワーのピュレ、カレーリーフ、デーツ、レーズン、乾燥させた野菜のパウダー(ビーツ、キャベツ、とうもろこし、人参、ほうれん草、バタフライピー)
カラフルな色粉を塗り合ったり掛け合ったりするインドのお祭り、ホーリーを表現した鮮やかな一皿。
”Land and sea”
Foie gras, monkfish liver, port wine, yuzu, mango
「陸と海」
フォアグラ、鮟肝、ポルト酒、柚子、マンゴー
ニューノルディックを思わせる繊細なスナックだが、用いられている食材は多国籍でユニーク。
Salted egg chips
Marshmallow of salted egg, small shrimps, seaweed
家鴨の塩漬け卵のチップス
塩漬け卵のマシュマロ、小海老、海藻。シンガポール発祥でアジア中に広まっている、家鴨の塩漬け卵風味のポテトチップスの再構築。
Grilled bamboo, quinoa, spices
筍のグリル、キノア、スパイス
White truffle, crispy milk biscuit, autumn truffle, porcini mushroom, morel mushroom
白トリュフ、牛乳のビスケット、秋トリュフ、ポルチーニ茸、モリーユ茸
Ikura, fish mousse, ash of eggplant and leek
イクラと魚のムースのコロッケ、茄子と葱の灰
Kachori
Fried dough, green peas mousse
カチョリ
揚げた生地、グリーンピースのムース。インドのストリートフードの再構築。
Fig leaf, Portuguese chili pepper, meat of pig head
無花果の葉、ポルトガル産ピーマン、豚の頭の肉
Tropical soup
Clarified soup made of cucumber, green apple, pineapple and celery; cream of pine nuts, walnuts and cashew nuts; dill and lemon verbena flowers
トロピカルスープ
胡瓜・青林檎・パイナップル・セロリのスープ、松の実・胡桃・カシューナッツのクリーム、ディルの花、ヴェルヴェーヌの花
Indian pulao
Porcini mushrooms, monkey head mushrooms, morels
インド風ピラフ
ポルチーニ茸、ヤマブシタケ、モリーユ茸、マルベリー、えんどう豆。ビリヤニというよりは、パーシー料理の影響を感じさせる一品。
“Abalone”
Porcini cooked in caramel, ganache with whiskey, oblato
鮑
キャラメルで炊いたポルチーニ茸、ウイスキーのガナッシュ、オブラート
鮑を模したポルチーニ茸。
Custard apple, cashew nuts, apricot and yuzu jam
カスタードアップル、カシューナッツ、アプリコット、柚子のジャム
訪問:2019年11月