Laia Erretegia | Hondarribia, Spain2019/06/02
サン・セバスティアンから車で東に30分弱、フランスとの国境の街オンダリビアの山奥に佇むアサドール。
「Asador Etxebarri」の前田 哲郎から当店の名前を聞いたのは1年前。調べてみると、比較的新しい店だがここ数年注目を集めているとのことで、訪問した。
店内に入って真っ先に目につくのが、真新しい熟成庫。切り分ける前のチュレタ(リブロース)の塊が鎮座している。バスク地方には数軒の有名な卸があるが、当店はそのうちの一軒、IRUKIから仕入れている。ドイツ産シンメンタールが大半を占め、残りはポーランド産赤牛とバスク産牛。国内産牛肉は入荷が安定しないので、北部ヨーロッパ産牛をもっぱら使っているそう。
メニューを見ると、目当てのチュレタ以外にも魅力的な料理が並ぶ。特に目を引いたのが、今回訪れた他のアサドールでは見かけなかった牛肉のタルタル、そして今が旬の涙豆とアーティチョーク。サン・セバスティアンの老舗「Ibai」に行くたびに注文していた、浅蜊のご飯があるのも嬉しい。どれも満足の行く出来だったが、特にアーティチョークが素晴らしかった。
チュレタは、30日熟成と60日熟成の二種類から後者を選択。シンメンタール種の経産牛で、9歳程度。
まずカットが繊細で丁寧。強過ぎない熟成香が食欲をそそる。口に入れると、旨味たっぷりの肉汁が広がる。水っぽさがなく、肉詰まりが良い。サシは強くないので、脂っぽさはなく、食べ進めても体に負担がかからない。
2人での訪問にしては注文し過ぎだが、前菜を全てハーフポーションにしてくれたり、チュレタは900gという小ぶりのものを探してくれたりと、良心的。おかげで余裕を持ってこの後のディナーに臨むことが出来た。
現代的な設えとホスピタリティ、そして食べ手の欲求に応えてくれるメニュー構成を兼ね備えた、新世代のアサドール。迷わずお勧めの一軒。
Vaca marinado
経産牛のマリネ
生の牛肉のスライスをマリネしたもの。セシーナ(牛肉の生ハム)と生肉の中間で、まさにいいとこ取り。
Steak Tartar de buey (Berrendo Colorado)
去勢牛のタルタルステーキ
ケッパーがアクセント。
Guisantes a la brasa
涙豆のグリル
Alcachofas a la brasa
アーティチョークのグリル
アーティチョークの下には、熱で脂が溶け出した生ハム。
Arroz con almejas
浅蜊のご飯
貝類の旨味をたっぷり含んだご飯に悶絶する。
Txuleta DRY-AGED
ドライエージングしたチュレタ
Pera con especias árabes, helado de caramelo y sal
洋梨のアラブ風スパイス煮、塩キャラメルのアイスクリーム
Tarta fría de queso
冷製チーズケーキ
ペドロ・ヒメネスを効かせた、大人なチーズケーキ。クリーム状で、軽い。
訪問:2019年6月